その日、久々に個室の宿屋に泊まることが出来た。
彼は部屋に入るなり深いため息をつき、のっそりとベッドの前に立つ。
今日は何故かとても疲れた、早く寝るか。
そう思った彼は、またため息をついてからベッドに座った。
ふと枕もとを見ると、なんとそこには一枚の手紙と紙袋が置いてある。
ただの白い封筒には、自分の名前が書いてある。
彼は物凄く不審に思いながらも、その封筒に手をかけた・・・・。
サラマンダーへ
やぁ、サラマンダー。
元気かい?
(さっきまで一緒にいたけどな・・・)
なんか、こう、さ。
手紙を書くっていうのも、案外照れるもんだな!
ほら、俺ってこういうの苦手だし・・・。
どちらかというと、口でズバッとはっきり・・・告白したりとかさ。
もう 『 スキスキ・アイラビューンvvワオvv 』って感じで、やっぱりアピールする事が大事だろ?
・・・って、これ、別に告白の手紙なんかじゃないからな!!
ご、誤解すんなよ・・・!?
(誰がサラマンダーみたいなモップ頭なんか・・・!!!!!)
なんか前置きが長くなってしまったな。
よし、本題に入るぞ、サラマンダー・・・。
なんかいちいち 『 サラマンダー 』 って書くとめんどくさいな。
・・・・う〜ん。
じゃぁさ、ここから先は 『 サラマンダー 』 を略して 『 焔・ボンバー 』 って書くことにするよ!
よしっ、それでいこう!
最高のネーミングだな!
な、焔・ボンバー!!!
焔・ボンバー( ← 大きく書いてみたぜ)
(この呼び方気に入ったから、明日ネミングウェイのカードで改名してやるよ!)
それがさ、昨日俺、たまたまフライヤと二人っきりになる機会があってさ。
『 ・・・グフッチュー・・・グフフハハチューッププハッ!!!!(笑) 』 (← あぁ、こういうのって文字にするのって難しいな!)
っていう妙な音がすると思って、びっくりして彼女のほうを見たらさ・・・なんと笑ってるんだよ!!
本当にいきなりだぜ!?
さっきまで
「ブルメシアの湿気が恋しいのじゃ・・・」
とかなんとかいって沈んでたくせにさ!!!
俺、フライヤがこんなに笑ってるの見たの初めてだったし、それどころかこんな笑い方も初めて聞いたよ!!
(その時俺は、はじめてフライヤの中のネズミの部分に触れた気がしたよ。)
そんなネズミな独り思い出し笑いをしているフライヤ・・・ずっと笑っているだけで、何について笑っているのかおしえてくれないんだぜ?
なぁ、酷いと思わないか?
そんなに笑えるネタがあるんなら、俺だって知りたいさ。
そう考えたら、無性に腹が立ってさ。
あんまり腹立たしかったから、俺、思わずフライヤにソリューション9!!
ピース!!やったぜYeah!!
そしたらフライヤのやつさ
『 ・・・チュ、チュー・・・(汗) 』
なんとか言いながら(ほんと大げさなんだからな!)
妙に苦しげに笑っていた 『 ネタ 』 を教えてくれたんだ。
その内容は・・・わかるだろ?
焔・ボンバーが、どうしてトレノで指名手配されているか・・・。
そして、どうして俺を敵視するのか・・・。
どうでもいいけど、そういえばトレノの宿屋で焔・ボンバーの指名手配(賞金付き)のチラシを見た時
俺、「なんでまたモップなんかに賞金が・・・」って思ったんだ。
だって、あまりにもモップ臭いチラシだったからな!!(←謎)
・・・久々に軽快な笑いをありがとう、焔・ボンバーッ(笑)!!
俺、瀕死状態のフライヤそっちのけで大笑いしたぜ!!!
いやぁ、こんなに笑ったのも久々だったよ・・・!!
それにしても焔・ボンバー・・・お前マヌケだな!
あーーーーーーはははははは!!!!!(←笑い声を手紙に書くな)
ヒィーーッヒヒヒヒィーーーッ(涙)!!!(←呼吸困難らしい)
それから半日、おれはそのネタで笑い続けた。
・・・そんな素敵な笑いをくれた焔・ボンバーに、俺は急に何かお返しをしたくなったんだよ。
こんなに笑わせてもらったんだ、それ相応のものを焔・ボンバーに贈りたくなって、それでみんなに相談してみることにしたんだ。
俺ひとりじゃ、考え付かなかったしな。
そしたらビビは
『 帽子 』 (そのモップ頭が収まるものが無かったんだよ!!)
ガーネットは
『 サングラス 』 (目がモップに隠れてるんだから、必要ないだろ?)
クイナは
『 カエル 』 (そういえばそのカエル色の服、何とかならないのか?)
スタイナーは
『 タバコ 』 (そんなもん吸ったら、頭に乗ってるモップに引火するだろ?)
で、結局決まらなくて・・・俺、独りでじっくり考えたんだ。
今、焔・ボンバーに一番必要なものは・・・ってさ。
そしたら、やっぱり武器や防具がいいんじゃないかって。
でも武器や防具も、焔・ボンバー、たくさん持ってるしな・・・。
それから丸二日、おれは考えに考え・・・
ついに、今の焔・ボンバーに一番必要なものを思いついたんだ!
いや〜、盲点だったよ!
そういえば、焔・ボンバーはコレは持って無かったよな、うん!
そこで、これを焔・ボンバーに贈ります。
オーダーメイドだぜ。大切にしろよ?
そして・・・あぶないから普段からきちんと身に付けるように。
じゃぁなっ!
ジタン・トライバルより。
P.S. フライヤは明日から、ネズミの代表 『 ポロリ 』 にする。
手紙を物凄い勢いで握りつぶし、びりびりに引き裂いた男は、わなわなと震える手で手紙の横においてあった紙袋に手をかけた。
その袋の中には
「?」
そう、まさに「?」なものが入っていた。
なにかカップのような、入れもののようなものの左右に、長い紐がついている。
しかも、革製品。
男はその物体が一体何なのかさっぱり分からず、頭に載せたモップからちらりと見える程度の目で、色々な
角度からそれを眺めた。
・・・見れば見るほど謎が深まるばかりのその物体だったが、男はなぜかとても懐かしいような・・・ほっとするような
そのフォルムに驚いていた。
なんだ、なんなんだ、このモヤモヤした気持ちは・・・!!!
ふと気づくと、その物体が入っていた袋から、一枚の紙切れが覗いていた。
そこには・・・
『 アゴカバー 』
男はやり場の無い怒りを、どこにぶつければいいのか分からなかった。
だからとりあえず、その 『 アゴカバー 』 に、ありったけのギルを投げつけ、布団にもぐりこんだ。
その夜は、長い、長い夜だった。
「ジタンからの手紙2」へ続く・・・